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暑い夏1 
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   『暑い夏』

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contens | 23:18:44 | トラックバック(0) | コメント(0)
短編小説の部屋
短編小説の部屋 

『拷問吏』
 
 石段を下りてくる足音は二種類。双方とも軽やかで貴族的だが、片方の方がより人生の影の部分をより深く知っているような気がする。拷問吏は部下たちとともに立ち上がった。「従子爵、仕事だ」
ぬばだまの黒髪が煌めいた。枢機卿は、手ずから囚人の鎖を握っていた。
「すでにサインは受け取っているな」
 拷問吏が頭を下げると、囚人を戒めている枷がつながる鎖を彼の前に示した。儀式めいた恭しいしぐさの後に彼はそれを受け取る。すでに受け取ったサインを頭の中で噛みしめる。内心で火花が散るが、それを部下やよもや囚人に見せるわけにはいかぬ。
 部下たちは拷問吏に命じられるでもなく、ただでさえ鎖で戒められている囚人の身体を、さらに鋼鉄の十字架にくくりつけようようとする。囚人は無反応だが、恐怖で金縛りにあっているのか、あるいは、泰然自若としているのか、拷問吏は仕事の前にすぐさま判断しなければならない。
一方、枢機卿は家臣たちの仕事を邪魔しないようにか、美貌に異様な微笑を浮かべながら静かに元にいた場所に戻って行った。


オオオカ裁き


「旦那様、どうなさいました?」
「・・・・・・・」
 ロクロウが新しく使えることになった主人は、小判の力で武士の身分を買った成り上がりである。最初は小僧として商人の家に徒弟として入り、やがて若くして頭角を表し番頭にまで出世する。その過程には、商人家の弱みを握ってそれをネタにのし上がったという噂さえある。抜け荷や奴隷売買の類をやっていたかなり後ろ暗い商人だったようだ。それゆえに彼らはやくざを使って消しにかかったが、逆に仲間とともにそいつらを制圧し、商人家における立場を強化したらしい。


1南、南のあるところに離れ小島がありました。
 何処からかそこに流れ着いたのは、とある若い女性でした。二十歳をそれほど過ぎているとは思えません。
 自分の身の上を憶えていないということほど、人間が不安に陥ることはないでしょう。
 そもそも、彼女にはそのような記憶すらありませんでした。手がかりは薄汚れた椅子だけです、しかし、自分の身の上を追求しようとはしませんでした。家に帰りたいとも思わなかったからです。もしかしたら、椰子の木と寄せては返す波の音だけが、彼女が何処から知っているのかもしれません。

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『余裕がなく、忙しそうにしてる人が街にあふれてる』
1 街の中はいつもこんな風だろうか。駅の前は人だらけ。うつろな目をした男、女が、駅舎から吐き出され、かつ、呑みこまれていく。
 現在、午後8時半。
 この時間に駅を後にする人間はわかる。帰宅であろう。しかしながら、路線が一車線しかない、こんな田舎駅に吸い込まれていくものたちは、どんな種類の人間たちだろう。
 
 夜のとばりは降りて相当の時間が経っている。出歩く人たちの目も夜目に慣れたころだろう。星々も夜空という絵画に慣れてきた。
 そんなたわいもない視線を空に向かって送っているのは、会社に帰宅中の男性である。この年、30を超えたばかりの本多伊太郎は、聞き慣れた呼び出し音に携帯を開くと、すぐに閉じてしまった。
 相手は彼の妻である。

続きはクリック。

『おひさまが西から昇ったら』

演奏が終わると彼方は楽器を膝に乗せた。Fine(フィーネ)という文字が何故か頭の中に刻印されている。目を瞑って楽譜は見えないはずなのに、くっきりと、それこそゴシック体の細かな部分まで手に取るようにわかるのだ。
 自分の世界から帰還するためには、友人の言葉が必要だった。目覚ましの音は背後から響いてきた。
「彼方、ごくろうさん」
「ああ、うーん」
 彼方は気だるそうにイトコの見慣れた顔を見た。
「どうしたの?変なものでもついているの、私の顔に?」
「いや、何だか、こっちまで感染しそうだよ」
「感染?何がよ」
 すこしばかり憮然として、女子音大生は声を荒げる。だが、女友達までが、彼に同調しはじめた。

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 少年ヴァンパイアは、過失とはいえ、自らが殺してしまった商人のことなど目もくれずに銃を弄んでいる。
「しかし、どうして、私はこいつを生かしておいたのだろう? うん?刻印が・・・・?!」
 ちょうど銃口の下辺りに数字が見える。
 それは年代を示していたが、彼の網膜はそれを信じることを拒否していた。
「おい、これを見てみろ」
「え?、何百年も未来じゃないか、これはどうしたことだろう・・・・・・?」
 巨体を折り曲げて、狼男は刻印が示す数字に見入った。
 記号の羅列から、明かに年号以外には思えない。
「何かのいたずらかも」
 こともなげにそう言う。大男に似つかわしくないきょとんとした顔が、少年には不満だったのか、憮然とした顔で怒鳴った。
 一瞬、それが純銀の弾に見えた。だから、彼はそれを畏れた。山の上から転がってきた物体に本能的な畏れを感じたのである。
 彼は、しかし、気を落ち着かせて、それを直視しようとした。もしも、それが例の弾丸であって、彼の唯一の急所に打ち込まれたならば、既に絶命しているはずであろう。

 見たところ、彼は普通の青年である。見方によれば、ティーンエイジャーの少年に見えるかもしれない。茶色の頭は短髪で、鋭い目つきとよく通った鼻を擁する顔を顕わにしている。年齢の若さだけでなしに、この青年からは揺るぎない自信のようなものを感じる。そんな彼が単なる銀色の弾を畏れた。
 側を見回しても、誰もいないのだが、風や木々にすら視線を感じる質なのか、青年は気まずそうに頭を掻くと周囲を見回した。そして、今、始めて見つけたような顔をして、銀色に光るものを拾う。
慧眼を光らせて、内部構造まで見抜くような視線を物体に刺してみる。おそらく人工の物質のように思えた。こんな色が、自然に存在するわけがない。
 続きはクリック。『せめてものやさしさ』
 車が走っている。
  左右に見える大小のビルに鉄塔。それらは尋常ではないスピードで背後に流れていく。スピード計を見れば、100キロを優に超えている。それらのことを総合すると、彼女が運転する車は走っているにちがいない。
 しかしながら、若い女性ドライバーにその意識は薄い。エンジンの作動による振動は彼女の尻に響いてはいる。おそらく、脊髄までは神経伝達がうまくいっているのだろう。いや、それは脳髄に達し、正常な神経作用を発揮しているにちがいない。だが、彼女の綺麗な瞳は何処か虚ろで、普段、見せているはずの美しさを発揮しているとはとうてい言いかねる。
 何らかの意識が肉体上の情報を拒否しているとしか考えられない。彼女の白い肌は、喉元や、緊張しっぱなしの二の腕は、上気して心なしかピンク色になりつつある。
 
 ここは東京環状、とある高速の上である。
続きはクリック。

『聖母子』
 少年に苛立ったのか、絵画に指を指す。
「あれを見てみろ」
「え?聖母の絵がどうかしたんですか?」
 空気を透明だと言われたかのように、訝しげに可愛らしい顔を顰める。まるで自分の方がおかしいと言わんばかりである。「
 あの絵、いつもと違わないか?」
 講師はさらに問いを重ねようとするが、少年は態度になんら変化を見せようとしない。明かに、彼には見えていない。
 彼の実父が言うには、少年はこの聖母を母親だと思っているらしいから、全く興味がないとは考えにくい。

 続きはクリック。

『闇の中にフッと浮かぶ金色の塊』


 闇の中にフッと浮かぶ金色の塊。それは拳銃である。黄金なのだろうか。もしも、それが本物ならば、いやそうではあるまい。何故ならば、金が銃の生ずる衝撃に自ずと耐えられるはずがないからだ。
 いま、黒いフロッグコートに身を包んだ何者が、銃に手を伸ばそうとした。
 だが、手に取って何事か確かめると、すぐに丸テーブルの上に置いた。ごとっと言う重々しい音がその存在感を暗示している。
 そして、おもむろに何処かへ去って行った。その足音は水中のように歪んで響く。ドアが開く音と締まる音はほぼ同時に起こったようにさえ聞こえる。それだけ、時空が歪んでいるのか。


「この銃の歴史を開陳しよう」
 続きはクリック。

『豆が転がった 第一部』
 一瞬、それが純銀の弾に見えた。だから、彼はそれを畏れた。山の上から転がってきた物体に本能的な畏れを感じたのである。
 彼は、しかし、気を落ち着かせて、それを直視しようとした。もしも、それが例の弾丸であって、彼の唯一の急所に打ち込まれたならば、既に絶命しているはずであろう。

 見たところ、彼は普通の青年である。見方によれば、ティーンエイジャーの少年に見えるかもしれない。茶色の頭は短髪で、鋭い目つきとよく通った鼻を擁する顔を顕わにしている。年齢の若さだけでなしに、この青年からは揺るぎない自信のようなものを感じる。そんな彼が単なる銀色の弾を畏れた。
 側を見回しても、誰もいないのだが、風や木々にすら視線を感じる質なのか、青年は気まずそうに頭を掻くと周囲を見回した。そして、今、始めて見つけたような顔をして、銀色に光るものを拾う。
慧眼を光らせて、内部構造まで見抜くような視線を物体に刺してみる。おそらく人工の物質のように思えた。こんな色が、自然に存在するわけがない

 続きはクリック。

『豆が転がった 第二部』


 少年ヴァンパイアは、過失とはいえ、自らが殺してしまった商人のことなど目もくれずに銃を弄んでいる。
「しかし、どうして、私はこいつを生かしておいたのだろう? うん?刻印が・・・・?!」
 ちょうど銃口の下辺りに数字が見える。
 それは年代を示していたが、彼の網膜はそれを信じることを拒否していた。
「おい、これを見てみろ」
「え?、何百年も未来じゃないか、これはどうしたことだろう・・・・・・?」
 巨体を折り曲げて、狼男は刻印が示す数字に見入った。
 記号の羅列から、明かに年号以外には思えない。
「何かのいたずらかも」
 こともなげにそう言う。大男に似つかわしくないきょとんとした顔が、少年には不満だったのか、憮然とした顔で怒鳴った。

続きはクリック。


『豆が転がった 第3部』

 狼男とヴァンパイアを乗せた不吉な馬車は、翌朝には目的地である城に到着するはずだった。しかし、ドアを開けた御者は驚いた。少年がいなくなっていたからである。
 肝を冷やした御者は、狼男が容認しないのに、馬車の中を隅々まで調べ始めた。
「もしかして、落ちてしまったのでは・・・・・」
「お前が心配することはない。それよりも守衛の兵士に伝えてくれ、これが手紙だ」
 そう言うとルードヴィッヒは羊皮紙の入った箱を渡した。
 おそらく、少年ヴァンパイアは既に入城しているはずである。日没寸前のか弱い太陽であっても、それは彼にとって最悪の敵なのだ。

「しかし、本当にここでいいのかな?」


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『豆が転がった 第4部』


 夕食会は午後6時を回るころに施行された。
 ルードヴィッヒは何処に出るかもわからない戸口を叩いたわけである。優に30人は入れそうな居間、吹き抜け二階ぶんはありそうな天井、それらは揺らめく蝋燭の灯火に照らし出され、いかにも霊妙な雰囲気を醸し出している。その部屋に貴人の男女、数十名が集っていた。
 その中心にいるのがこの城の主人である。一族の容貌を典型的に露出させた姿は、いかにも伯爵家の頭領という印象を醸し出している。
 この外見に、誰もが頼もしいと思うようだ。貴人たちの伯爵に対する会釈には、単なる礼儀以上のものが感じられたが、それは彼個人に対するというよりも、むしろ、彼の背後に横たわる名門に対する拝詭のように見えた。
 ルードヴィッヒにとって見れば、それは意識できない畏れのようなものである。



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ほんわか』

 首都高に乗った時のことまでは憶えている。ハンドルを握る手に記憶がある。
 通常道路と高速の違いは、少しでも車を駆る悦びを知った人間なら肌で感じることができるからだ。この場合の肌とは人間の皮膚そのもののことではなくて車体のことだ。
 赤のフェラーリF40。
 地上で数台しかないうちの一台。その半分は若い女性が現金で支払った。因みに、その半分は、彼女が嫌がるにもかかわらず無理矢理に父親が出した。
 言うまでもなく、彼女はよほどの階級の出身であるばかりか、まだ若い身空で半額とはいえ、超高級車の半額を用立てることの可能な身分ということになる。


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ドラえもん二次製作『改悛のジャイアン』


「さあ、やってもらおうか」
「早く、やってよ。約束でしょう!?」
 二人の男女の声が響く。
「もう、やっているのか・・・ジャイアンは気が短いから、しずかちゃんも来てるの。それにしてもここまで声が聞こえるって、二人とも声が大きすぎだよ」
「とにかく、急ごう、ジャイアンが本当切れると誰も手がつけられないからな」
「彼の扱いは親友のボクにまかせてよ、ふふ」


  ここは都立経世中学の構内。授業が終わってホームルームがすんだ今、校内は人気がなくなりはじめている。初夏だというのに、空気は冷たく澱んでいる。

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『父と子』

「お前も歳を取ったな、ほら、もっと、喰え!」
 元イタリア伯爵、兼、元第3竜騎兵隊長はぼやいた。愛竜のサビーネがさすがにこの頃は老いたと見えて、食が進まないのだ。好物である山羊の骨付き肉を半分も残している。
 
 しかし、その表情は明るい。水平線を視る目は澄んでいる。何本もの皺に埋もれてい
るにもかかわらず、どうしてそんなに綺麗なのか、サビーネは不思議そうに喉を鳴らす。
 それもそのはず、父親を継いだ息子が海の向こうから帰ってくる。フェラーラ帝国に帰ってくるのだ。しかも、上々の戦績を歩んでのことだ。
「南国が愛おしかろう。そう言えば、お前とも世界中を回ったものだな」
 顎の下を撫でられるとサビーネは嬉しそうに、グルグルと喉を鳴らした。人間、五人は優に乗れるほど背中は広い。それほど大きいのだから、彼女が首を伸ばすと、とうてい手が届かなくなる。

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『台』

 
 市立百合小学校。住宅街から一段、いいや、二段三段も高い場所に、それこそ山の中、もっと表現を適正にするならば、山の上を平らに整地しそこに小学校を建設した、となるだろう。
 地球温暖化が進んでいるのか、今年の夏も酷暑と表現されるのに相応しい夏だった。とうぜん、それは尾を引いて夏休みが終わっても、残暑というには非道すぎる太陽が青空を支配していた。

 炎熱が校庭を焦がす中、9月1日となれば恒例の行事が行われようとしている。すなわち、学校長による演説である
『ママからの手紙』
 ぶかぶかの服をあなたは、いかにも誇らしげに着ていたわね。いや、嵌っていたと言った方が正確かしら。まだ、3歳なのに、これから仕事に行くの?私はきっと、満面の笑みで、おそらく聖母マリアのようなお顔になっていたと思う。だって、あなたが向けてくれた笑顔は、本当に美しかった。神様からの贈り物としか思えなかった。
 ママは、あなたを鏡だと思いたかった、もう手の届かないところに羽をはやして逃げてしまおうとしている 今となっては、さらにその思いを強くする。
 
 もう、あなたはわたしの息のかからないところにいる。

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>『少年』



少年は、走っていた。いや、彼だけではない。彼と同い年の少年少女たちが、息を切らせながら街の中を駆けている。普段、学校に缶詰にされている時間に、外にこんな大人数が存在している理由にはどんなものが考えられるだろうか?
 結論を言うと、彼らはマラソン大会を満喫している。若かりし青春時代を謳歌しているのだ。汗の一粒、一粒が煌めき、街ゆく人の若さへの羨望を誘っている。
 ただし、それは大人の視線に限定された物言いであって、必ずしも真実ではない。彼らには彼らの主観というものがあるのだ。
 子供たちが大人の押し付け通りに閉じ込められるなら、社会というものは固定化し、やがて凍りついてしまいには油の足りない機械のようになってしまうだろう。

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>『ちぐはぐな写真』

 如月有希は、カウンセラーが示してきた絵にはっとなった。
 もちろん、そのようなクライアントが示す一瞬の変化を、心理のプロが見逃すはずがない。だが、それを簡単に表情に出すことはない。プロとしてキャリアを踏んできた結果だ。
 表情を最小限に抑えて、クライアントに臨む。相手は、中学生の少女だ。いじめられて不登校になったと母親がいきさつを説明してくれた。
 だが、外野の情報にしがみついている場合ではない。ちゃんとした生と向き合っているのだから、集中すべきは目の前に座っているクライアントじしんに対してでなくてはならない。


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 >『邪恋』

  

 桜が散るころ、志崎水脈(みお)がレズだという噂は、そおっと、クラスに浸透しつつあった。
 ここは、首都圏にある私立高、海松(みる)学園高等部2年C組の教室である。四限が終わって昼休みということで、束の間の安息を得た少女たちは、それぞれグループを作って弁当を広げる場所を探し始めた。
 海松学園は、偏差値で言うと上の下と言ったレベル。トップの数人が東大に毎年入学する。少女たちと言ったが、そのとおり、この学校は女子校である。旧学制における女学校を元にしている。それが由来しているのかなのか不明だが、首都圏では五本の指に入るお嬢さん学校ということになっている。
 受験校として、それなりのレベルを保っているとはいえ、同じ程度の学校と比べると、何が何でも一つでも高い偏差値の大学にという押し迫った空気は感じられない。
 校風は至って自由で、私立にもかかわらず校則はかなり緩い。しかし、制服を改造するような生徒が見られないのは、この学校の名声ゆえだろうか。


   >『女の人生』



 「あのチョクゴというのはどういう意味だ?」
 壮年の男性が低い声で言った。チョビヒゲを鼻の下に蓄えているが、大層、威厳があって明らかに一般人ではなさそうだ。
「教育勅語ですよ、姶良(あいら)大佐」
「わしは、退役したのだ。姶良でいい、沼崎中佐。それにしても、時代は変わったものだな。わしが若いころなら 町中であんなことを言ったらただではすまぬ。例え、女学生でもな」
「もっとも、誰にも通じないでしょうが」と、40を少しばかり超えたと思われる中佐は、苦笑いとも薄笑いとも言えぬ表情を浮かべて、そう答えた。


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>『花束を貰って困る人』


 城山(きやま)太郎は、高速を走っていた。
 時速100キロに近づいているが、彼が高校、大学、両学生時代に跨っていたバイクと違って、単なる箱にすぎないので、直接、身体に風圧を受けることはない。しかし、風圧を受けたように表情はいよいよ険しくなっていく。
 ある地点に近づいているからだ。
 そこは、元恋人である佐山怜が確実に生息している。
「ふった相手に電話するなんて非常識じゃないか?それとも、自分が負わせた傷に塩を塗り付けるのが、精神科医 志望のお嬢さんとやらのご趣味か?」
「あーら、だいぶ、弁舌爽やかになったじゃない?私とつきあい始めたときには、ろくに女の子に口もきけなかったくせに、憶えているのよ、私に話しかけるのに清六を使ったのよね。いいから、浅山SAに来なさい、午前11時30分よ、一秒も遅れないこと、それから、用って言うのは、忘れ物をしたの、あなたにね、取り返したいだけ」
 そんなやりとりが頭の中を巡る。

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>『どんどん焼きとだるまさん』


 自分はだるまと呼ばれている、一種の人形である。
 いつからこの家にあるのかわからない、詳しくはよく憶えていない。いや、憶えようとしなかったと言うのが適当だろうか?
 意識が永遠に存在するというのはどれほど苦痛か、出生以来、何ら成長もせず老いもしないそんな景色を見続けなければならない、おそらく、あなたたち人間にはその苦痛が死ぬまでわかってもらえないだろう。
 人形というものは、造った人の心が流れ込むものだ。
 私を最初に所有した人物のことが印象に残っている。彼女が、私に対して強い愛情を出生以来長じてまで抱いていたことは事実である。
 しかしながら、彼女以降、どのような所有権の変異があったのか、具にそれをおぼえているわけにはいかない。
 もしも、常に意識を保っていたら、処理しきれぬ情報と感情の海に溺れてどうかなってしまう。人間が、一日のうちのかなりの時間を睡眠に空けているように、人形も意識を休ませる一定の帰還を必要とするのである。
 深い微睡みの中で、とうぶんの間私は意識を閉じることを望んだ。最後に彼女が言った言葉が記憶に残っている。
「東洋の人形」
 限りなく情愛に満ちた声が砂金の輝きを残した。


>雑踏の中に』
 「ほら、ほら、綾佳ちゃん、花火よ!見てゴラン」
 綾佳と呼ばれた少女は、作り笑いをしながら夜空に顔を向けた。しかし、その顔は恐怖に引きつっている。
・・・・・・綾佳ったら、ほんとうに花火が恐いのね。
 母親は、娘が何故、花火をそんなに怖がるのか記憶になかった。別に火が関係することで嫌な目にあったことがあるわけではない。小さい頃から、といってもまだ5歳になったばかりなのだが、テレビの中で火事が起こったとしても、思わず目を背けてしまう



 



>『冷やし中華・・・』


 今年も、夏が近づいてきた。しかし、東京市、宮川駅前にある中華料理店、みさお飯店にとって、本当の意味においてその季節が来るとはとうてい思いがたい。
 それも何十年越しのことである。
 初夏の昼下がりにとつぜん入店してきた、山東信昭の素直な感想だった。
 グラサンにダブルのスーツ、油でも使っているのかピカピカに磨き立てられた革靴、中途半端にがっちりとした体格、それらを総合するとどう見ても危ない世界の人間にしか見えないだろう。しかし、歴とした堅気の、一部上場はしていないが、首都圏においてはそれなりの規模と歴史と伝統を誇る広告代理店の社主である。
 ポマードで固めたらしい中年の頭を揺すりながら、駄目とわかっていながら誘いをかける。
「なあ、雄介、今年は冷やし中華をやったら、どうだい?張り紙なら我が社が請け負うぜ」
「・・・・・」


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>『梅雨前に出会った少年』


 梅雨の寸前あるいは、初夏の終りごろの、かなり蒸し暑い早朝のことだった。晴美は、なかなか寝付けずにキッチンに降りてきた。連日の忙しい仕事が重なったうえ、ほとんど朝帰りに近かったから、小一時間ぐらいしか、結局のところ寝ていないということになる。だから、相当に意識は危うかった。ほとんど朦朧という表現が適当なくらいに、覚醒がうまくいっていなかったから、まるで酔っているようだった。足元がぐらついて、壁が歪んで見えた。これは相当におかしいなと、気分転換に冷たい牛乳でも飲んでもう一眠りしようと思ったのだ。




>『死神のリーゾンデータル』

 真夏に、すこしばかり日時的には足りない、だが、天候的、気温的にはすでにそのハードルを越えている、誰しも子供時代を覚えているものだから、いわゆる夏休み前の昼下がりだった。人間だったときのことを思い出せば、土曜日だったと思われる。
太陽は残酷さを、まだ完全に現していないが、しかし、人間たちを汗ばませるくらいのあくどさを表明している。

 その家に踏み入れるまで安藤桃助は自分の身分を完全に忘れていた。60歳を超えるまで自分が何のために生まれてきたのか考えたこともなかった。ただ、自分のために働いて金を稼いできただけである。しかしながら、定年後たまりにたまった金を使う方法を知らない。いつの間にか若い日々は過ぎ去って、帰宅すれば古女房が化石化していて、家には隙間風がすうすうと吹いている。そんな哀しい老人になってしまっていた。
 ただし、家族のために汗を流してきたなどと、仕事しかないサラリーマンにありがちな戯言を並べるつもりはない。あくまでも自分のためだけに頑張ってきたのである。なんとなれば、家族と自分は精神的な意味において同一でありひとつのカテゴリーに収まるものだからだ。
 いくらなんでもそこまでは落ちぶれていない。
 だが、寂しいのは事実である。
 そんな桃助が足を止めたのは、閑静な住宅地のなかの、とある一軒家だった。




>『59階』


[ 平志津恵にとって叔父は大切な存在だった。
彼があんなことになってしまったのは、確かに親友が原因だった。事件が起きた直後はさすがに二度と顔をみたくないと思った。もしも顔を合わせたりすれば、互いの関係を永遠に壊すようなことを言ってしまうのではないか、それが怖くて避け続けていたのだ。いざ顔を合わせてしまえば自分が何をするのか、制御不能だと思われたからだ。
その間、彼女がクラスメートからどんな扱いを受けていたのか、まったく感知できなかった。
しかしながら、しばらく時が経過すれば考えも変わっていく。すぐに理性でものが考えられるようになり、昔のいい思い出なども脳裏に姿を現すようになった。
よくよく考えてみれば、彼が溺死したのは親友の責任ではなかったはずだ。しかしながら、理性がそういくら言っても感情が黙っていないもの。
そうはいっても、いつか昔通りに戻ると漠然とおもっていた。なんといってもまた子供であるし、時間はたっぷりあるのだから。


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>『花嫁姿』

 絵を頼んだときにはこんなに早く旅立っちゃうとは、思ってもみなかったんだよ。咄嗟に思いついたのが、なぜ、花嫁姿だったのか、それに深い意味があったなんて、きっと、後から考えたことだと思う。しかし、もしかしたら何かのメッセージだったのかもしれないとも、一方では思う。

 「花嫁」という画題をどう受け取っていいのか、少女はわからなかった。彼女とそれほど仲がよかったわけではない。ただ、客観的事実からすれば、小学校時代から何度かクラスが同じだったことは何度かあったようだ。逆に言えば、つねに顔を突き合わせておきながら、相手を覚えていないほどに疎遠だった、ということになる。
 少女の絵はあまりにも年齢離れしていて、親しい友人への誕生日プレゼントには絵を送るのが恒例だった。どうして、それを彼女にターゲットを見定めたのか。そもそも、誕生日の日時すら知識として得ていなかった。
 たまたま背後から見かけた彼女の顔が、絵を描く人間としての少女の心の琴線に触れるものがなにかあったのかもしれない。


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少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つcontents
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   『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ』

   『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~序章』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1850.html』


『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~1』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1852.html』



 
 少女は真夜中に自宅に庭に穴を穿つ。
 それは単に自分の精神の安定取り戻すための行為でしかなかったから、または、全寮制の私立学校にあっては自宅の庭なるものは身近になく、白元菜栖実にとって、入寮一日目は手持無沙汰でしょうがなかった。
 というよりいらいらしてしょうがない。3人ほど同僚者がいるために、しかも、今ほど友人関係を形成するにあたって重要な期間はないといっていい。なんとしても少女特有の弱みをみせるわけにはいかないのである。
 同室のクラスメートは3人、いずれも第一印象は良かった。しかし彼女は彼女にしかわからない理由によって、対面の日が怖くてたまらなかった。まるで処刑場に引き立てられる罪人のような心持だった。
 学校の正門、あるいは彼女が最初に目に飛び込んできたのは、巨大な寮の門であったが、エウロペ大陸に由来を持つ旧い宗教の教えを、学校創立の基礎としていだけに・・・アニメかラノベに登場するような恥ずかしく、かつきらきらした名前が本校の名前である。



『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~2』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1857.html』




  少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ。
 白元菜栖実は、入学から一週間ほど経過した夜、やはり我慢できなくなって、寮の中庭にスコップを持って罷り出ていた。何故にそのようなものを彼女がそんなものを持っているかといえば、彼女は同僚の小此木真澄とともに菜園部に入部したからであって、決して家から持ち込んだわけではない。なんとなれば、彼女は中学に入ってまでまさか、そのような愚かなマネをするとは夢にも思っていなかっただから。
 しかしながら、体育が終わって更衣室に入った菜栖実は、けっして一対一で同室したくない、この世で唯一の相手と鉢合わせしたのである。


『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~3』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1862.html』



 まさか、本当にドーベルマンを連れた監視員が学校の寮を徘徊しているわけがない。あくまでも真澄と菜栖実の恐怖感を主観で表現しただけのことだ。
 少女ふたりは、サーチライトと猛犬がうなる声を背景にして自室に逃げ込んだ。
「いったい、どうしたの?真澄!菜栖実!」
「だめ!電気をつけたら、外にばれちゃう!」
 真澄は、同僚者の声の調子からすぐに彼女が点灯することを予期して、小さく叫んだ。二人も、菜栖実の泣き声を聴いて事態の深刻さを理解した。少女はただ泣きながら謝った。四人の肝を冷やさせたのは、ドアノックの音が部屋に木霊したからだ。



『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~4』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1881.html』



『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~5』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1880.html』




「ごめんなさい、菜栖実さん」
 寺中真知子さんに名前で呼ばれるほど親しかったかしら?という言葉を呑み込んで、絶対零度で、しかもキリのような声のする方向に顔を向ける。
 完全に論理と知的な思考のみに脳を使っているような印象をまっさきに受ける。それは菜栖実の一方的な見方だろうか?中学生にもなれば、自分の考えから一歩引く程度のことはある程度できるようになる。
 彼女が言いたいことはさきほどの繰り返しだろう。 
「仁科明子さんがあなたとお友達になりたいって」
「・・・・」
 本当に女優になるべきだと少女は思った。いや、あの6年生のクラスにいたほぼ全員が、この場の彼女を見たらそう思うにちがいない。

『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~6』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1886.html』

 寺中真知子は言いよどんだ。
 やはり、と小此木真澄は内心ですらほくそ笑むことはなかったが、我が意得たりと思うほどには自負した。だが、衆人の中で彼女の瑕疵を露わにすることは、これからの学校生活を考えると躊躇せざるを得なかった。
 真知子は、おそらく、この場の状況だけで、菜栖実が明子をいじめていたと勝手に錯覚してしまったにちがいない。
「ねえ、仁科さん、あなたに訊きたいんだけど、入学以前から菜栖実を知っていたの?」
「・・・・・」
 ここで明子がどうこたえるのか、それはこの教室にいる大多数が疑問に思っていることだった。
 しかしながら、それは教室に入ってきた女性教師によって無残にも押し潰されてしまった。
 「一体、何があったのですか?とっくに予鈴はなったと思いますが、ちがいますか?」

『少女は真夜中に自宅の庭に穴を穿つ~7』http://aliceizer.blog24.fc2.com/blog-entry-1893.html』


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contens | 00:12:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
『いじめの教室』contents
 
contents  『いじめの教室』

『いじめの教室 第一部』


 浅村綾が始めてこのクラスに入ったとき、それは二年生に進級した初日だったのだが、少女はさらざらとした嫌な感覚を得た。
 新しい環境に移動するたびに、元来、勘のいい少女の元には、ある種の予感が訪れる。それはほぼ百発百中の可能性で当たり、彼女に未来について確かな明暗を告げるのだった。
 もしも、彼女が大人で競馬や株の上下が予知できるならば、いっそのこと、それは幸福といえるだろう。しかし、彼女は大人ではなく、競馬や株の値が読めるわけでもない。ただ、これから1年間の幸不幸がだいたい分かるというていどで、自分の運命をコントロールできるわけではない。
 だから、不快なイメージが少女の脳裏を掠めたとき、自分の能力を呪ったものだ。せめて、期待することすら許されないのか、と。 


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 『いじめの教室 第二部』


 ゴールデンウィークが終わっても、浅村綾と飯田由佳は、まだ一度も口を聞いていない。それどころか目を合わせたことすらほとんどない。
 二人の間に築かれる裂きがたい絆。
 それは少し先のことになる。だが、その過程までの約一ヶ月、二人は見えない世界で意思を互いに交換していたのかもしれない。
 そうは言うものの、今のところ、二人は互いを深く知る術を持っていない。
 一つの色に染まった教室は紅衛兵が闊歩した、文革時代の中国に似ているかもしれない。
 女子は言うまでもないが、男子までが永和子の色に染まった2年3組の教室。
 そのような場所で別の色を主張するのは、二人だけだった。
 もっとも、二者のうち、前者は密かに、そして、後者はそう主張せざるを得なかったのである。何故ならば、いじめられっ子という役割を無理矢理に背負わされ、彼女に選択の余地はなかったからである。

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 『いじめの教室 第3部』

 浅村綾と飯田由佳は無意識の世界で互いに通じ合っていた。それは真新しい導線のようなもので、電気が通ったことは一度としてない。
 こういうことはご存知だろうか。
 電気製品が中古か新品かの両者を分けるのは、回路に電気が通ったことがあるか否からしい。
 いちど、通ってしまえば、中古品になってしまう。言い換えれば、もはや、後には引けないということになる。
 綾と由佳の間に引かれた導線に電気が流れるに当たっては、とある象徴的なオブジェクトが必要だった。
 駅前にすくっと建っている白い大きな建物。
 彼女たちが住んでいる地方都市では一番大きな総合病院だった。

 両者が一堂に会するに当たってはそれなりの経緯の説明が必要になる。

 
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 『いじめの教室 第4部』

 病室のドアがバタンと閉まる音。
 それは、ある意味ひとつのシーンが終わることを告げていた。しかし、次にどんなシーンが幕を開けるのか、ふたりのうち、どちらにも予見できなかった。
 浅村綾と飯田由佳。
 二人の少女はさながら人形だった。それも、人形師にとっくに忘れ去られ、工房の隅に立て掛けられた哀れな木偶にすぎない。
 それでも、少女たちを辛うじて立たせ、歩かせていた力は何だったのだろうか。その力は、良くて惰性であり、悪ければ、この病院に巣くう魑魅魍魎の一種としか思えなかった。場所が場所なれば人死にがなかったとは、誰にも言わせない。
 綾にはその自信が確かにあった。
  

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 『いじめの教室 第5部』

 村綾と飯田由佳がどのように教室の中を漂流していたのか。
 記録は彼女たちの日記を含めてほとんど残っていない。だから、関係者から類推する他はない。
 由佳に対するいじめがエスカレートしつつあったこの時期、ちょうど中間テストまで数日を残すだけとなっていたが、綾は自分も泥沼に腰まで浸るような気分を味わっていたことは、数々の証言から裏付けられる。

 今、萩田教諭が担当する国語の授業中である。
 中学生と言えば、成長期まっただ中だろう。それも、三限目となれば胃液が消化するものが無くなって自分じしんをも融かしはじめるころである。
 だが、綾にとってそんな余裕はない。


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 『いじめの教室 第6部』

 鍾乳洞が何処までも連なっている。白い壁面が織りなす空間は美しいが、そこに流れる空気は何故か冷たい。ネズミのように白服の男女がその間をチマチマと走り回っている。
 ここは、由佳の母親が入院している病院。
 いつものように二人で見舞いをした、その帰りである。そして、恒例のように同じ場所へと向かうとしている。
「ママのお腹、また大きくなったね」
「うん・・・・・」
 綾は友人に不審を覚えた。異常な明るさが不気味に映る。それは教室での彼女を知っているからこそ思う、一種の被害妄想だろうか。
「どうしたの?綾ちゃん」
「ううん、違うの、ただ・・・・・・」
 綾は友人にみなまで発言させなかった。

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  『いじめの教室 第7部(1)

 浅村綾は飯田由佳とのつながりを未だ残していた。いや、より正確を期すならば、由佳の父親である託児によってお零れ的にそれを保つことができたのである、そう表現した方が適当だ。
 
 雨の日、親友を振り切るように病院を後にしようとした。
 そこに託児が運転する車が急ブレーキを切った。
 それを目撃した赤毛の少女は、まるで自動人形のようにメモを託した。
「由佳、デジタルで連絡を取り合うのはもう無理。板東さん、ウチにも来るようになったの。だから、携帯、PC、どちらにしろ、メールは無理。だから、ごくアナログ的な方法で連絡を取り合おう。住所、書いておくね。手紙、ちょうだい。こちらからも出すから。私たち、しばらくはこんな関係がいいと思う。でないと、互いにつぶれちゃう」
 父親からメモを受け取った由佳は、黙ったまま受け取って、自室に閉じこもった。しばらくすると押し殺すような泣き声が聞こえてきたが、それを聞いたのは飼い猫のミーちゃんだけだった。託児は往診のために家を後にしていたのである。

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『いじめの教室 第7部(2)

 
 萩田教諭は、予め芝居の台本があってそれに従っているかのように携帯を開くと、これまた芝居じみた手の動きでメールをチェックし始めた。
 身を引き裂かれるような戦慄が由佳を串刺しにする。
 予定通りの経過に満足そうに微笑む永和子。
 そして、悪魔の計画に荷担しようとしていることに、自責の念を憶える綾。
 教室きってのエンターティナー、板東永和子がどのようなショーを見せてくれるのか、今か今かと待ち望んでいるクラスメートたち。彼らの担任である萩田でさえ、永和子の駒にすぎないのだ。
 この教室に集う男女はその立場によって十人十色に分けられていた。
 由佳以外のほぼ全員の視線が、平凡な萩田の手と表情に集中する。表情と感情に乏しいウリ顔がやがて、怒りによって崩れていくのが、誰の目にも明らかだった。

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『いじめの教室 第7部(3)
 板東永和子にスポットライトのすべてが当たっている。しかし、自分だけが独占することにはさすがに罪悪感を抱くらしい。誰かにお裾分けしたくなった。彼女が選んだのは言うまでもなく、飯田由佳、その人である。
「ウウ・・・」
「何で、泣くの?私は、同級生同士で、しかも、親友同士なのに敬語を使うのはおかしいって言っているだけなのに」
 教室のあちらこちらから苦笑が起きる。いじめのリーダーもそれに応じる。

 牛の体内で食糧が複数の胃を行ったり来たりして消化することを反芻というが、ちょうどこの教室はそれに尽きるのだ。
 永和子の残酷な言葉は、日本人形めいた美少女に突きささる一方、クラスメートがそれを嘲笑によって増幅させ、彼女を攻撃する。少女は二重に傷つくのだ。クラスメートたちはけっして、いじめの観客ではない。サッカーのサポーターのように自ら参加する。もっとも、本場のサッカーで言えば、ピッチに侵入してボールを蹴るような行為が認められる、よりひろい意味でのサポーターではある。

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『いじめの教室 第7部(4)


 昼休みまでの時間は、浅村綾にとってまさに地獄だった。
 彼女にしても、じっさい、携帯電話というものの存在をこれほど恨んだことはない。もしも、それがなければこれほどの苦しみを味わうことはなかっただろう。
 常に何処にいても、知人とコンタクトが取れる。数十年前ならばSFの世界のみに存在した夢の機械だった。
 だが、いさ、実現してしまえば、便利さゆえの障害に苦しみということもありうる。
 綾の両親が青春を過ごした時代ならば、そんな弊害とは無縁だった。だが、現在は両親がかつて棲んだ時代ではなくて、情報化社会が極度に進んだ21世そ紀である。
「いじめも情報化の波から逃れることはできなかった」などと、教育評論家の間の抜けた文章が頭を過ぎる。
 これは現実逃避にすぎない。

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『いじめの教室 第8部

 聞き慣れた声は、浅村綾ともうひとりは・・・・?!
 なんと、板東永和子の声だった。全身が恐怖で凍りつく。綾の声が近づいたとき、テレビなんて壊れてもいいから、彼女に縋り付きたい思いに囚われた。だが、そんな思いを一瞬で粉砕してしまったのが、地獄の底から響いてくるような、永和子の怖ろしい声だったのだ。
「飯田さん、聞こえるかしら?」
「ぐぐぐ・・!?」
 きっと、体重をかけているにちがいない。鋼鉄のような重量が全身にのし掛かってくる。彼女の悪意がそのまま迫ってくるようだ。
 真っ暗で狭い空間に閉じ込められた少女は、外部を想像するしかない。だが、それ故に恐怖感は増幅していく。

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『いじめの教室 第9部

 「綾ちゃんだって?」
「エリ?」
 綾は、友人が発する冷たい声に動揺した。難しい数学の問題を解いているような気分になったのである。
 内田エリ、浅村綾、そして、飯田由佳、この3人の間には複雑な構図が存在する。
 かつて、経験したことのない複雑な空気をどうしていいかわからず、佇むことしかできない。何か言葉を発さねばならないと思っても、何も思い浮かばない。投げられたボールをどう返したらいいのか、もじもじしていると、エリの方から畳み掛けてきた。
 それは彼女の方からの助け船だったのだろうか?
「そうよね、綾ちゃんは迷惑しているんだよね、この人から友だち扱いされてさ」
「そ、そうよ・・・・」
 思わず、気軽に答えてしまった。3人の間に発生した三角形の緊張に耐えられなくなったのだ。

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『いじめの教室 第10部

 これ以上触れたら火傷をする。綾は、親友を抱き留めながらそんな非現実的な空想を思い浮かべた。それほどまでに彼女は高熱に浮かされていたのである。低温火傷を負いながらも、赤毛の少女は由佳から離れられない。
「保健室に行こうか、それとも家族の人を呼ぶ?」
「そ、それだけはいや!や・・ぁ、ハア、ハア」
 苦しい胸の下で、少女は必死に懇願する。
「ゆ、由佳ちゃん・・・」
「か、帰る・・・」
 
 由佳の考えていることは、手に取るように読める。


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『いじめの教室 第11部

 由佳が熱を出して、早くも一週間が経った。しかし、当然のことだが、携帯には何の音沙汰もない。二人の間でそのように約束し合ったのだから、メールを出すこともなく、また、出すはずのないメールに返事があるはずもない。
 しかし、夜の街が唄う静かな音楽を聞きながら、綾はベッドの闇の中に沈んでいた。食後の一時、電灯も点けずに自らの膝を抱いている。その右手には携帯が握られている。こんな様子はどう少なく見積もっても、誰もが異常だと見なすにちがいない。
 だが、少女の精神は正常に作動していた。ある悲壮な決意のために、束の間、母の子宮への回帰を志向したのだろう。

 その決意とは、ある人間に電話を掛けることである。

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『いじめの教室 第12部

 高級デパートにあるようなエレベーターの中で、綾は永和子と知らないおばさんとの会話を聞いている。二人の間では他でもない、彼女が親友と認める唯一の少女、飯田由佳のことが話題になっているのだ。
 何処と言って特徴のない40歳くらいの女性、板東永和子にとっては馴染みの人物らしい。「永和子ちゃん」と呼び習わしているということは、かなり幼いころから知り合っていると見なしていいだろう。
 さきほど、ケーキ店、ザッハトルテの店主と三歳ころから知り合っている、永和子の口から聞いたが、このおばさんとも同じような関係なのだろうか。
 そのおばさんは25階で降りると、自室に戻っていった。あたかも、本当の母娘のように和やかに語り合っていた。その内容は、学校生活はどうとか、ピアノはどうとか、それらのようなごくたわいない話だったが、端で見ていると互いの親密さが透けて見えた。
 ところが、おばさんがいなくなると途端に、永和子はクラスのリーダーの顔に戻ってしまっていた。

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『いじめの教室 第13部


 浅村綾はぎょっとした。永和子の方から、重要案件を切り出してきたからである。一瞬、耳を疑ったが、じっさいにその美しい唇が動き、彼女の声が聞こえてくるのだから、あえて自分の五感に疑いの目を向ける必要性を感じなかった。
「よく、この近所で遊んだのよ、初めて出会ったのは幼稚園とか小学校じゃないのよ、これが」
「・・・・・・・・」
遠い目の少女は、あたかも現在でも話の内容の人物が自分の親しい友人でもあるかのような口調で語り続ける。
「産後まもなくの、授乳ベッドの中っていうから驚きよね」

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『いじめの教室 第14部

 永和子に肩を貸してもらいながら、やっと、マンションの彼女の自宅に戻ることができた。その間、胸が高鳴って、時間感覚がかなりあいまいになってしまった。せいぜいで、数分にすぎないであろうに、数時間を要したような気がする。
 「・・・・・・・」
「どうしたの?永遠子さん」
 時計を見ると、午前1時を回っていた。さすがに眠くなったのか、深夜の町を見る目も何処か虚ろに見える。
 クラスのリーダーは、何か言いたげに言葉によらないメッセージを出している。
 こんな時に、赤毛の少女は持って回った表現が苦手だ。思わず、直接的に相手の望むところをついてしまう。過去の体験からか、目の前の人物が望むところに非常に敏感な体質になってしまっている。
「私に何か聞きたいことがあるの?」
「・・・・・・わかっているはずよ」

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